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Channel: アドリア海のフラノ -SINCE 2006-
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奥多摩最速伝説 ガンマ400の憂鬱

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1981 RGガンマ500(XR35) /マルコ・ルッキネリ

 1982 RGガンマ500(XR40) /フランコ・ウンチーニ 
 
 1983 RGガンマ500(XR45) /フランコ・ウンチーニ 
 
 
 
奥多摩最速伝説 ガンマ400の憂鬱

さて、その当時の悩みは、.....

私は奥多摩を下っていた。
ガンマ400は下りのタイトコーナーが面白かった。
得意だった。
クイックに曲がるからだ。
 
長めのホイールベースで直線安定性を確保していたが、
小径フロント16インチ、細いリアタイヤ、柔軟性のある
アルミフレーム、そして重心が低いスクエア4エンジンより
その軽快な特性が作り込まれていた。
 
おそらくエンジンの重心が低いとちょっとしたアクションで
バイク反応するからだろう。

また、エンジン搭載位置が低く後ろなので、
ダイレクトにリアタイヤを押し出す性格もその走りにプラスした。

それが意図して作り込まれたものなのか?
いまとなってはわかならい。
しかし、1976年~82年までの7年間、
GP500メーカータイトルを獲得したスクエア4と
RGガンマ500レーサーのシャーシを基本にしているので、
その素性の良さを身に着けていた。
そう考えるのが妥当だろう。

RGガンマ500レーサーは、
ライバルのアウトインアウトの常識的な走法に対して、
インインインでコーナーを回ったほうが
サーキット一周の走行距離は短い。
タイムを短縮できる。
そういう考えにより開発された。

徹底的な軽量化とコンパクト化。
フルフローターサスペンションの進化、
18インチフロントタイヤを止め16インチフロントタイヤで
クイックなハンドリングを狙う。
などなど次々に新たな機能が盛り込まれた。

その結果、
マルコ・ルッキネリ(1981:スチールフレームのRGガンマ500)
とフランコ・ウンチーニ(1982:アルミフレームのRGガンマ500)
ら二人のイタリアンライダーにより2連連続GP500チャンピオン
を獲得した。

翌1983年シーズン、
ライバルは新型エンジンを搭載したバイクの熟成に成功した。
ホンダ(広角112度V3+アルミフレーム+前後16インチタイヤ)
とヤマハ(V4+セミモノコックフレーム
(デルタボックスフレームの始祖))に支配された。
スペンサーとロバーツで勝利を分け合った。
RGガンマ500は1勝も出来なかった。
歴史の転換点だった。

話をもとに戻す。
スピードが低いタイトコーナーでは、
いつもリーンアウトで右に左に切り返していた。
それでクイックに軽快に曲がる。
また、無意識に逆ハンをきっていたと思う。

そのとき、スクエア4エンジンをミッドレンジで回していても、
粘るような、フラットなトルクによりそういう走りを可能
にしていた。
4ストのような余計なエンブレは存在しない。
ガンマ400で走る下りのタイトコーナーが連続するコーナー
が面白かった。

ちなみに、
水平対向6気筒エンジンを搭載したホンダ・ゴールドウイング
もでかい図体のわりに軽快なハンドリングだそうだ。
その秘密はエンジンの重心が低いかららしい。
 

そして古里の信号を右折して吉野街道に入った。
ここは長いストレート、高速コーナー、S字コーナーなど
タイトコーナーが続く走路よりも
より速いスピードの走りを楽しむことができる。

問題はここからの走りだ。

直線では2速/9000rpmまで回して
ガンマ400の驚速ともいえる加速を楽しんでいた。
そしていまは新奥多摩大橋がかかる高速コーナーに差し掛かった。
3速で行くべきか?
それとも2速で行くべきか?

今回は3速を選んだ。
スピードを落とし高速右コーナーに進入した。
このときリアブレーキは使わない。
フロントのみで減速した。
当時のトルクロット付きリアブレーキを信用できなかったからだ。
ガンマ400の前に走らせていたGSX-R400で怖い思いをしたことがる。
そんなに強く踏んだわけでもないのにリアタイヤがロックして、
いや、リアサスが縮まったたまま元に戻らないためか?
20mくらいスネークしたことがあるからだ。
それがトラウマとなって長い間リアブレーキが使えなかった。
初期のフルフローターサスペンションに問題があったからかも
しれない。

ガンマ400のサスは改良されているらしいのだが、.....
いまはリアブレーキが使えないと困る、
全制動、姿勢制御、濡れた路面などで使用するからだ。
ガンマ400はフロントブレーキしか使わなかった。
 
お尻をりシートストッパーまでずらしてリーンイン。
すでにコーナリング体制に入ってる。
長めのホイールベースながら、
フロント16インチタイヤによりクイックに向きを変えが可能だ。
しかし、フロントに必要以上の面圧をかけないようにする。
タイヤの接地面積が狭く安定しないため、
スリップダウンする可能性があるためだ。

つまりフロントタイヤは向き変えのきっかけに使うだけで、
コーナリングフォースを高めるためには使えない。
スキーのストックみたいなものだ。
当時の16インチバイアスタイヤはそんな困った性格だった。

今回こそ理想のコーナリングを成功させたい。
しかし、タコメーターの回転はすでにパワーバンドから
外れている。
かまわずスロットルを絞るが3速では回転が上がらない。
リアタイヤに充分なトラクションがかからない。
だめだ、このままでは曲がれない、.......
いつもこんな調子だ。

どうしてタイヤがグリップしている感覚が希薄なんだ。
3速では回転が下がりすぎて有効なトラクションがかからない。
そのためコーナリング・スピードを上げられない。

2速でパワーバンドに入れると、
パワーがかかりすぎてリアタイヤが滑りそうだ。
そのぎりぎりの線でスロットルコントロールすることが必要だが、
当時の私のスキルでは無理だった。

やはりパワーバンドの下の回転域では速さは取り出せない。
結局、2速でも3速でも速く走れない。
高速コーナーは適当なスピードでやり過ごして、
出口でスロットルを大きく開けるしかない。
 
その原因はガンマ400のパワーバンドが7000rpmから
9000rpmのまでのわずか2000rpm
しかないことにある。
それを下回る回転では有効なトルクを発生しない。
しかも3000rpm付近の燃焼が悪い。

スクエア4エンジンの特徴は、
180度点火間隔の同時爆発(1番と4番、2番と3番の交互)
エンジンのため、その加速は強烈だった。
 

そういう性格なので、
パワーバンドそれ以外では違いが大きすぎた。
まるでスイッチがオンオフするような感じだ。

180度点火間隔の同爆エンジンとは、
スズキとヤマハが2サイクルスクエア4またはV型4気筒エンジンで
採用したテクノロジーだった。

1990年、ホンダは長らく90度等間隔点火のエンジンを
使用してきたが、この年に180度同爆エンジに転換した。
エンジン特性でタイヤのグリップ、トラクションを獲得したい
からだった。

その後1992年にビックバンエンジン(不等間隔爆発)を生み出す
原動力となった。
 
話をもとに戻す。
ガンマ400はパワーバンドから外れると本来のパフォーマンスを
発揮できない。
90度Vツインエンジンと同じく(理論上の1次振動が
ゼロ)振動はきわめて少ない。
4ストのようなエンブレはないのでフロントブレーキに強力な
制動力がないと止まれない。

いや、市街地を走るトルクがないのではない。
1速でスロットルを開ければ普通に加速する。
そして2速で巡航できる。
スピードが低いタイトコーナーが連続するシチュエーションでは、
ガンマ400を走らせることが楽しかった。

エンジンのパワーバンドを使ってハイスピードコーナリング
しようとすることが非常に難しいということ。

また、ガンマ400のフラットバルブ式強制開閉キャブでは
なおさらなだ。
4ストバイクに装着の負圧式キャブブレターのように吸気の流速
を負圧ピストンが自動的にコントロールしてくれるわけではない。
あくまでもキャブのスロットルバルブは、
右手でコントロールすることが鉄則だ。
それはどんな2サイクルバイクでも同じだ。

ガンマ400のエアボックスはステアリングヘッド直下にあり、
そこからキャブまで長いインダクションチューブが伸びる。
これにより安定した吸気を提供している。
トップエンドのパワーだけを考えた場合、
ストレートに吸気したほうがパワーは出る。

しかし、ファンネルだけの直キャブだった場合、
外部環境の影響を受けやすく4個あるキャブの吸気条件を
そろえるのことは難しいだろう。
雨の中を走行したら、
一発でプラグがかぶることは火を見るよりも明らかだ。

RGガンマ500レーサー、RGB500市販レーサーの場合、
サーキットの気象条件やコースレイアウト合わせて
そのつどキャブセッティングすればいいので直キャブ
ファンネルだけで大きな問題にはならない。

スクエア4エンジンのロータリーディスクバルブ吸気機構は
キャブセッティングがやりやすかったそうだ。
バイクのべースセッティングさえしっかりしていれば容易に
性能を引き出すことができる。

1982年にGP500チャンピオンを獲得したフランコ・ウンチーニ
は、その2年前に市販レーサーRGB500を走らせていた。
相棒のベテランメカニックはメンテナンスマニュアル通りにマシン
を組み立てて、ベースセッテンングを施し、後は調整範囲内だけ
バイクセットアップした。

自分の考えでバイクを改造することなどしない。
ノーマルバイクの性能を100%引き出すことに集中した。
このマシンで2位表彰台1回、3位表彰台2回を含む50ポイントを
獲得してランキング4位に輝いた。

RGB500はそれほど完成されたバイクだった。
ガンマ400/500はその素性の良さを受け継いでいる。
完成度の高いバイクを作り上げることは、
一朝一夕の短い期間で出来ることではない。

雨の日、晴れの日、猛暑の夏、寒い冬、高地など、
さまざまな環境で走るロードスポーツバイクでは、
エアボックスと吸気フィルターを取り付けて安定した
条件を与える必要がある。
また、4個バラバラに離れたキャブレターの同調を
いかにとるかも大きな問題だった。。
それでいて高いトップスピードを出せる
ようにしなければならない。
そんなことは直キャブでは不可能。
 
ガンマ400/500の場合は、
さまざまな条件で走りぬくためのセッティングだったので、
計測された最高速のデータがばらついているのは、
そんな要因が考えられる。
エアフィルターからキャブまで行程が長いが、
1980年代の設計はそれが最良だった。

しかし、ガンマ400のインダクションチューブの口径が
小さく、それが長いということで低速トルクを増強する効果
があったと思われる。
それで市街地でも走れるエンジンとした。
 
そういうこともあり、
市街地やワインディングでは4、5、6速は使わない
いや、使えない。
いつも2速と3速を上げたり下げたりすることになる。
 
一度でいいから6速をフルに使ってみたい。
それが当時の願望でもあった。
それは高速道路上でスピードを出さないと可能にはならない。

しかし、直線でスロットルをワイドオープンして高回転まで
回すと、スクエア4エンジンの威力により強烈な加速を味合わ
せててくれる。
これを知ってしまうと、味わうと4サイクルエンジンの加速は
ものたりない。

当時私はガンマ400という劇薬を通勤で毎日服用していた。

もっとグリップの良い太いリアタイヤだっら、
3速でハイスピードコーナリングできたら、......
2速から3速にシフトアップしたとき、
もっと高い回転を使えるようにすれば
有効なトルクを引き出せせる。

そのためには、
リアのスプロケをロングする。
もっと太いリアタイヤを履かせてパワー負けさせない。

フロント120-80/16、
リア140-70/17を履かせたことがあるが、
それを使いこなすことは当時の私には無理だった。
セッティングもできない。
 
いまでもガンマ400のことを考え出したら
キリがない。
当時は悩み抜いていた。

最近読んだオートバイ雑誌を読んで気が付いたことがある。
エンジン搭載位置が低く後方に搭載されていると、
バイクを前に押し出す力が違う。
そういうバイクの加速は気持ちが良いそうだ。
 
想い出してみると、
ガンマ400の場合もエンジン搭載位置は極めて低く
少し後ろに配置されている。

そして180度点火の同時爆発(1番と4番、2番と3番)の
スクエア4エンジンにより、
その体感加速は想像を絶するものがあった。

ガンマ400の加速の気持ち良さとは、
そういうことなんだと思う
そして直進安定性は長めのホイールベースで確保している
ようだ。

大排気量4サイクルバイクではけして味わえない
フィーリングだ。

その当時、
トラクションという言葉を初めて聞いた。
リアタイヤがグリップしているかを言っているようだ。

スロットルコントロールでリアタイヤにトラクションをかけ
でバイクをインに向けさせることを言っているようだ。

低回転で大きくスロットルを開けてその立ち上がりトルクで
タイヤをグリップさせることのようだ。
 
しかし、ガンマ400では難しい。
まるでスイッチオンまたはオフしかないようなエンジン特性
だからだ。
低回転では充分なトルクを取り出すことができない。
 
そういうとき、
そのトラクションコントロールが得意なバイクがある
ことを知った。
それはイタリアのドゥカティ750F1だった。
 
 
 
バックンンバー

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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